賃貸マンションのほっとするお話

移転する必要がない場合には、賃料を下げるように要求しコストを削減することが可能です。
また近年は、建物やその設備のサイクルだけに限らず、事業サイクルそのものも短期化してーぺ傾向にあります。 このような場合、人員をどのように戦略的に配置していくかを考えることが経営上大変重要な問題となりますが、規模・立地の可変性に富む賃借は、保千Iよりもフレキシブルな対応が可能なため、迅速な意思決定が可能です。
これに対し保有の場合には、無駄なスペースが生じてもその部分だけ外部へ賃貸したり、売却することは困難なケースがほとんどです。 このように、時代の変化への対応に催れていることも保有にはない賃借の大きなメリットの1つです。
(これについては第5章で詳しく説明します)一般的に、保有より賃借の方が賃料を支払う分コストがかかるというイメージが先行しがちです。 しかし、1':1社ビルには無駄なコストや非効率な点が隠されていることが多いものです。
このため、保有から賃借に切り替えることによって、問題の所在が明らかになり、結果的にはコストを削減しながら、なおかつ生産性も上げることが可能です。 こういった制点を持つことは、ファシリテイマネジメン卜の観点から見ても大変重要なことなのです。
不動産保有には突発的な事象や規制の改正などでコストがかかることがあり、このような場合には所有者側で負担せざるを得ません。 これに対し賃借の場合には、突発的な事象が起きても、賃借入のコスト負担はきわめて限定的となります。

なぜなら、所有者側が負担したコストを賃料に転嫁し、間接的に賃借入に負担させようとしても、継続賃料(既存のテナントが契約更改する時の賃料)を急に上げることは困難だからです。 もし、強引な賃料値上げを要求され、交渉、が不調に終わった場合には、裁判を起こすか、退去して他の建物に移転するという選択も可能です。
これを別の言葉で言い換えるならば、保有の場合は、想定外の費用が発生することによって毎期のキャッシュフローが大きくぶれる可能性があることに対し、賃借の場合は、想定外の費用が発生しでも賃料の変動幅というのは限定的であるため、毎期のキャッシュフローへの影響が小さいということを意味しています。 環境問題への対応がクローズアップされる世の中にあって、いつ何時、アスベストや土壌汚染のような対応を迫られることになるかも分かりません。
不動産保有を続ける場合には、目には見えない潜在的なリスクがあり、それが元で急なコストアップを強いられる可能性があることを、常に念頭に置く必要があります。 以上のように保有には、資本コストの問題、ファシリティマネジメントから見た非効率性・社会への対応力の問題、潜在的なリスクが引き起こす突発的なコスト負担などの問題において、デメリットがあることは否めません。
結果的に見て、保有と賃借のどちらが有利となるかはケースパイケースと言えますが、不動産の保有を続けていく場合には、通常のライフサイクルコストがかかるだけでなく、持っているだけでさまざまなリスクを負担させられていることを自覚する必要があります。 いま日本の企業は、グローパルな競争を勝ち抜くために、「選択と集中」という言葉に代表されるように、かつての多角化経営に終止符を打ち、得意とする分野をコア事業として、そこに特化していくよう大きく舵を切っています。
コア事業に特化していく中で、撤退した事業に供していた不動産は、コア事業のために再利用されなければ持っている意味がありません。 多くの企業が不要になった不動産を売却し、売却代金で負債の圧縮などを行い、財務体質をスリム化しました。
パフ守ル崩壊後の長くて谷の深い不況を抜け出し、企業は選択したコア事業から再び大きな利益を得るようになり、経営者は自信を取り戻しています。 しかし、企業の不動産戦略という意味においては、さらに次のフェーズがあるのです。
コア事業として有効に活用している(と思われている)不動産についても、それがコア事業のために適正に貢献しているか否か検証しなければなりません。 コア事業に不動産固有の収益が入り込むことにより、コア事業を見る白が曇らされているかもしれません。
本章では、コア事業に隠れる不動産事業を抜き出すシミュレーションを行い、不動産を保有する企業が、コア事業と不動産の関係をどのようにとらえるべきなのか考えていきます。 企業活動を行うためには、活動拠点となる不動産が必要で、す。
多くの企業は、複数の事業所を展開し、それらの事業所は保有と賃借の形態が混在している場合が多いようです。 このケーススタディでは、東京都内で複数の脂舗を持つ小売業を想定材料とします。

小売店は、各店舗にて売上という明確かつ均質な収益が上がるため、ケーススタディの材料として適しているからです。 数値に明確な違いが表れるように、面積あたりの売上単価の水準が大きくて、かつ、1届舗あたりの売場面積も大きい、百貨店のような届舗群を想定します。
Xストアーズは、東京都内に5つの白舗を持つ百貨店です。 全体の利益構造(損益計算)は、売上100に対して、売上原価が70、販売費及び一般管理費が25で、営業利益は5です。
家賃3が一般管理費に含まれているので、家賃を含まないと家賃支払前の営業利益は8となります。 これを表したのが、図表4-1です。
Xストアーズの5届舗のうち、A店は、最も都心部で良い立地にあって売場面積も大きい旗艦店です。 以下、郊外に向かつてB、C、D、E脂と続きます。
これらのうち、A脂舗は自社で保有しており、他は賃借です。 5店舗の中でA店の売上は群を抜いています。

B店と比べた場合、売場面積自体も4万ぱに対して6万ぱと1.5倍なのですが、売ー二は400億円に対して900億円と倍以上です。 1ぱあたりの単価で1.5倍の売上があることが分かります。
A店の立地の良さによる実力の差のようです。 以上を表したのが、図表4-2です。
しかし、A店の売上は、A店の立地の良さを十分に発揮したものなのでしょうか。 立地の良い場所への出店はコストがかかるはずで、そのコストは、店舗を賃借したときの適正な賃料(市場賃料)で測ることができます。
ただし、保有から賃借に切り替えた場合、出店コストとして賃料負担が生じる代わりに、保有していたときに負担していた施設運営に関する費用(ファシリテイコスト)が軽減されます(第3章53ページ参照)。 このケーススタディでは、54ページで紹介した社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会によるWFMベンチマーク調査報告書2005年度版』に記載のデータを用いて、ファシリテイコストの負担減について調整を行います。
なお、不動産の取得に必要な資金の資本コストや、賃借の敷金を調達する資本コストもありますが、このケーススタディでは、営業利益ベースの比較までしか行わないので考慮しません。 ファシリテイコストは、賃借料を含めないと、自己保有の場合は年間に1m'あたり6万6,600円かかりますが、賃借の場合は3万6,600円で済みます。
したがって、不動産を保有から賃借に切り替えた場合、家賃の負担は生じますが、その他のファシリテイコストが3万円下がります。

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